はじめに
ODは小学生の約5%、中学生の約10%に見られる頻度の高い疾患です。状は朝に強いため登校に支障をきたしたり、また午後には症状が軽減し、夜になると元気で目が冴え眠れず、時に怠けている、朝起きられないのは夜更かししているからだと誤解を招きます。
ODは自律神経の機能障害による身体疾患ですが、心理社会的ストレスも関与しています。疾患を正しく理解して、適切な支援に繋げることが重要です。
症状について
- 立ちくらみ、あるいはめまいを起こしやすい
- 立っていると気持ちが悪くなる、ひどくなると倒れる
- 入浴時あるいは嫌なことを見聞きすると気持ちが悪くなる
- 少し動くと動悸あるいは息切れがする
- 朝なかなか起きられず午前中調子が悪い
- 顔色が青白い
- 食欲不振
- 隣茄痛をときどき訴える
- 倦怠あるいは疲れやすい
- 頭痛
- 乗り物に酔いやすい
項目が3つ以上当てはまるか、あるいは2つであってもODが強く疑われる場合には、検査を勧めます。
(小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン(日本小児心身症学会)より
検査について
まず、てんかんや心疾患、貧血ル内分泌疾患などの基礎疾患がないかどうか、必要に応じて脳波や心電図、血液検査を行います。
ODの診断には、新起立試験を行います。10分間安静臥位の後、10分間起立し、血圧や脈拍の変化を見ます。この検査で汰以下の4つのサブタイプに分類されますが、近年では新しいサブタイプも報告されています。
- 起立直後性低血圧(INOH)
- 体位性頻脈症候群(POTS)
- 血管迷走神経性失神
- 遷延性起立性低血圧
治療について
疾病教育
疾患の重症度に関係なく重要です。
- 起立時の血圧低下や頻脈、脳血流の低下によって朝起き不良や頭痛、立ちくらみ、動悸、倦怠感、さらには集中力や記憶力の低下、気力の低下を生じ得る
- 症状は朝~午前中に強く、午後から徐々に軽快、夜は元気になり寝付けないことも多く、悪化すると昼夜逆転してしまう
- 天候に左右されたり、春や秋など悪化しやすい傾向がある
ODは身体疾患であることを、保護者はもちろんのこと、学校の先生方も正しく理解することで、子供が傷つくような発言や、必要以上に頑張ることを強要して子どもを追い詰めるような事態は防げます。
非薬物療法(生活療法)
- 起立時は、いきなり立ち上がらずに頭を下げた状態から30秒くらいかけてゆっくり立ち上がる
- 立っている状態が長くなる場合には、下半身への血液貯留を軽減するために足をクロスしたり足踏みをしたり、時に着圧ソックスなどを利用する
- 睡眠リズムを整える
- 寝スマホは禁止
- 日中も横になって過ごす時間が多いとデコンディショニングを起こし悪循環となるので、日中は無理のない範囲でできるだけ起きて過ごす
- 水分・塩分摂取水分はできるだけこまめに、塩分も多めにとる
- 運動30分程度の散歩やスイミングなど
- 暑気に注意する
薬物療法
ミドドリン塩酸塩などの昇圧剤が基本で、漢方薬を併用することもあります。
最後に
ODは薬を内服すればすぐに良くなるものではなく、中等症~重症だと年単位での加療が必要となることもあります。また非薬物療法の併用が不可欠です。ODの子どもたちが治療に前向きに取り組めるよう、周囲は疾患の理解を深め、適宜学校との運携を取り、焦らずに見守れる環境を整えることが重要です。