はじめに

脳脊髄液減少症は、なんらかの原因で脳脊髄液が漏出し、脳脊髄液が減少するために神経系の機能不全が生じて、頭痛や頚部痛、嘔気、めまい、耳鳴り、倦怠感など多彩な症状を呈する疾患です。

小児の脳脊髄液減少症は、頭痛やめまい、倦怠感などOD(起立性調節障害)と症状が重なり、また実際にODの診断基準を満たすことも多いため、ODと診断されていることもあります。
本症の認知度はまだ高くはありませんが、ODと診断されていても治療に難渋したり、頭痛をはじめ体調不良で日常生活に支障をきたしている子どもたちの中に、本症は紛れています。

症状について

非常に多彩な症状を呈しうるのが特徴です。頻度の多い順に頭痛、倦怠・易疲労、めまい、嘔気・嘔吐、頚部痛、手足のしびれ、不眠、光過敏、視力低下、耳鳴り、集中力低下、記憶力低下などが挙げられます。
頭痛は起立性頭痛が特徴です。起立性頭痛というのは、頭痛の性質を表す症状名で、臥位で軽快、座位や立位で悪化する頭瘤です。ほとんど連日性に出現し、運動後に増強することが多いです。鎮痛剤の効果は乏しいです。またある時を境に突然発症することが多いです。

誘因について

原因が特定できない特発性と、交通事故やスポーツに起因する外傷性があります。誘因が特定できる外傷性40%程度で、原因不明のことも多いです。体育の授業や部活動での事故、転んで尻もちをついた、自転車で転倒、歩いていて車と接触など、活動量の多い小児ではあらゆることが誘因となり得ます。

診断について

まずは症状や経過を詳しくお聞きすることが重要です。画像検査(頭部や脊髄のCTやMRIなど)では異常を認めないことも多いので、正常であっても本症を否定はできません。
脊椎MRIの撮影法の工夫によって診断できる場合もありますが限定的で、確定診断にはRI脳槽シンチグラフィーやCTミェログラフィーが必要になります。

治療について

症状や経過、検査から本症が考えられれば、まずは安静臥床と十分な水分補給で1-2週間経過を見ます。その後効果が不十分な場合や、小児では誘因がはっきりしないまま精査で確定診断に至った時には、硬膜外自家血注入療法(ブラッドバッチ)を行いますも小児の治療成績は良好です。

最後に

ほぽ毎日のように頭痛やふらつき嘔気匂倦怠感があり辛いのに、鎮痛剤をはじめ薬が効かない、登校したいのにできない日がある、ODと診断されて加療しているが全然良くならない、いくつか病院を受診して検査をしたのに異常が見つからず、仮病や怠け病だと思われている、このような状態の子どもの中に、脳脊髄液減少症は紛れています。診断・治療ができる医療機関が限られているので、なかなか辿り着けない場合もあるかもしれませんが、対処法、治療があります。また、原因が分からないまま体調不良の日々が続くと、先が見通せないため精神的に落ち込んでしまうかもしれません。少しでも気になることがあれば、こ相談いただければと思います。