アレルギー科とは
人の身体には、体内へ侵入しようとする病原体(ウイルス、細菌 等)や寄生虫などの異物を排除しようとする仕組みがあります。
これを免疫と言います。
この免疫が何らかの原因によって、人体に害がないとされる物質(花粉、ダニ、埃、食物 等)についても過剰に反応してしまうことで、様々な症状(鼻水・鼻づまり、くしゃみ、喘息、流涙、結膜炎 等)が生じることがあります。
これをアレルギー反応(一般的にはアレルギー)と言います。
同反応に対する診療を中心に行うのがアレルギー科です。
とくに子どもは様々なアレルギー症状が起きやすいという特徴があります。
咳や鼻水などの風邪の症状が長引いている、ある特定の食物に対して何らかの症状がみられている気がするという場合は、何らかのアレルギー疾患の可能性があります。
心当たりがある場合は、一度ご受診ください。
なおアレルギーは大きくⅠ型からⅣ型まで4つに分けられますが、小児はすぐにアレルギー反応が起きるという即時型であるⅠ型アレルギーの患者さまが多いとされています。
関連するアレルギー疾患には以下のようなものがあります。
主なアレルギー疾患
気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、じんましん、アナフィラキシー など
気管支喘息
気管支喘息とは
空気の通り道である気道(気管、気管支)に慢性的な炎症が起きることによって気道が細くなり、「ゼーゼー、ヒューヒュー」などの呼吸音(喘鳴)、呼吸困難、咳が出始めると止まらない(重症の場合は呼吸停止もあります)などの症状が現れるようになります。
発症の原因は、主にアレルギーによるもので、ハウスダスト、ダニ、特定の食べ物等によって引き起こされると言われています。
また患者さまの中には、アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎を併発していることが多いのも特徴です。
なおアレルゲンが判明していれば、その原因から避ける環境づくりをしていきます。
治療としては、喘息発作が起きていない状態では、長期管理薬としてロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)吸入ステロイド薬(ICS)などを使用します。
また喘息発作が起きた場合は、それを抑えるための治療として、SABA(短時間作用性β2刺激薬)を用います。
そのほか、ステロイド薬(内服、点滴)、テオフィリン点滴などを使うこともあります。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎とは
かゆみの症状が強く出る湿疹が良くなったり悪くなったりを繰り返している状態がアトピー性皮膚炎です。
元々アレルギー体質にある方、あるいは乾燥肌等によって皮膚バリア機能が低下し、アレルゲン(抗原)が侵入するなどして、皮膚が炎症を起こして発症するといったことが原因として考えられています。
同疾患は、生後2ヵ月頃から症状が出始めるとされています。
乳児期は頭部や顔面(主に頬周辺)を中心に赤くて湿り気のある湿疹がみられるようになります。
発症部位については、上記以外にも胸部や腹部、手足の屈曲部に広がる場合もあります。
なお1歳を過ぎると湿疹部位はカサカサと乾燥し、黒ずんでいきます。
また発生部位も顔面や頭部から、首(頸部)の周り、肘や膝の屈曲部(内側)などで発症するようになります。
さらにかゆみに耐えきれなくなって爪を立てて掻き壊せば、皮膚症状を悪化させてしまいます。
ちなみにアトピー性皮膚炎は、思春期に入る頃には次第に治るようになると言われていました。
ただ最近は成人になっても症状が続く、または成人になってから発症するというケースもみられるようになっています。
そのため環境的な要因も影響しているのではないかとも考えられるようになりました。
治療は、皮膚の炎症に対して、タクロリムス軟膏やステロイド外用薬などの塗布をしていきます。
またアレルギー剤などの服薬もあります。
原因(アレルゲン 等)が特定されている場合は、それを避ける環境づくりも必要となります。
またスキンケアも大切です。
この場合、普段から肌を清潔にしておくほか、保湿クリームで乾燥から皮膚を守るといったお手入れも欠かさないようにします。
食物アレルギー
食物アレルギーとは
食物がアレルゲンとなって、いろんなアレルギー症状がみられている状態を食物アレルギーと言います。
乳児の時期に発症することが多く、乳児期から幼児期に関しては、鶏卵、小麦、牛乳等によって発症することが多いです。
幼児・学童期以上になると、甲殻類(エビ、カニ 等)、ナッツ類(ピーナッツ、カシューナッツ 等)、小麦、ソバ、果物(リンゴ、バナナ、キウイ、イチゴ 等)によって起きるようになるとされています。
主な症状ですが、じんましん、発赤、呼吸困難、喘鳴(ゼーゼー等の呼吸音)、嘔吐・吐き気、腹痛、下痢、鼻水、鼻づまり、目の充血、チアノーゼなどがみられます。
また複数の臓器にわたって全身性のアレルギー症状が強く出ている状態がアナフィラキシーと呼ばれる状態で、さらに血圧低下や意識障害が現れているとアナフィラキシーショックと診断されます。
この場合、適切な対応を行わないと命に関わる場合もあります。
治療についてですが、まずアレルゲンを特定させる必要があります。
そのうえで、発症させないための環境づくりとして栄養食事指導が行われます。
この場合、原因となる食物を可能な範囲で少量から摂取していきます。
摂取量を決めるために経口負荷試験が必要となることがあります。
ただ全ての食物に対して行われるのではなく、将来的に耐性が獲得しやすく、頻繁に口にする機会の多い、小麦、鶏卵、大豆、牛乳等を対象としています。
なおアナフィラキシーの症状が起きてしまった場合は、アドレナリン自己注射をまず行いますので、自宅にアドレナリン自己注射薬であるエピペンの準備が必要です。
追加の治療として、抗ヒスタミン薬、気管支拡張薬なども用いられます。