• 2015年6月13日
  • 2015年6月20日

武蔵野にふく風

この武蔵野の地に越してきて、25年以上が経つ。この地にふく風は、横浜や東京といった海辺の土地とも違うし、山脈を超えた新潟や、東北にふく風とも異なる。この地にふく風は、他のどの地域とも異なる。それを伝えるために、この武蔵野の地で思い、感じたことについて、少し書いてみようと思う

私のイメージの中で、武蔵野の土地と言えば、武蔵野台地のことだ。まず、ここは、台地だ。行政区分で言えば、ふじみ野市、富士見市、川越市、狭山市、三芳町、入間市、所沢市などであろうか。ここは畑作地域である。冬の晴れた日には、地平線まで続く畑の向こうに、富士山が見える。それがこの武蔵野西部における風景だ。私はこの畑の大地に沈む夕日が好きだ。

西武新宿線と東武東上線に囲まれた、所沢、三芳、川越、ふじみ野のエリアには、昔ながらのこの土地の風景が、未だに残っている。そう、イメージで言えば、宮崎駿監督の作品、『となりのトトロ』の光景と言えば、近いだろうか。一説によれば、『トトロ』でサツキとメイが越してきた「松郷」という地名は、所沢市松郷を指していると言われる。関越自動車道の所沢インターを降りて所沢方面に向かい、東部クリーンセンターがある辺りの交差点を松郷地区と呼ぶ。映画の舞台の昭和30年台に実際はどうであったかは分からないが、映画の中では水田が続く「松郷」であるが、実際のこの辺りの土地は、大部分が畑である。この「松郷」交差点から北に進むと、川越駅近くになるまで、ずっと畑が続いている。

水田地帯にふく風と、このどこまでも続く畑にふく風は、違ったものだ。日本人の原風景として、水田がどこまでも続く光景を思い浮かべる人が多いだろうが、これは武蔵野西部には当てはまらない。

この風は、夏は熱い。むっとした熱波だ。水田の上をふく水蒸気を含んだ風ではなく、熱せられた地面の香りがする。また、この風は、冬は乾燥して土を含んでいる。よく言われるのは、洗濯物を外に干すとすぐに、汚れてしまうということだ。

海沿いの街の風が磯の香りがするように、この武蔵野の風は土の香りがするのだろう。私は、この土の香りのする風を思い描きながら、この土地について感じることを随時書いてゆこうと思う。

K.Nakano

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